2018年10月17日、カナダ連邦政府は嗜好品としてのマリファナ(大麻)の所持・使用を合法化しました。ただ連邦政府のほか多くの州政府は慎重な姿勢をとっており、大麻入り食品などの解禁は1年先としたり大麻の供給体制も厳格に管理するということです。
2013年に世界で初めて南米ウルグアイが大麻を合法化しました。「世界で一番貧しい大統領」として、日本でも有名になったムヒカ前大統領が、大麻を合法化することで、ブラックマーケットを解体し、犯罪組織の弱体化を狙った政策を踏襲したものと言えます。
カナダではお祭り騒ぎの様子がテレビで紹介されました。これに驚いた日本の人々。「麻薬を合法化するとはいったいどういう事なんだ?」こういう疑問を持つ人が殆どでしょう。大麻を所持したり使用して逮捕された人が沢山いますからね。
カナダが大麻を合法化した背景など調べていきます。
目次 Contents
カナダが大麻を合法化した理由
2015年の選挙の際に「大麻合法化」公約として掲げていたカナダのトルドー首相が、マニフェストを実現した形です。
■犯罪組織への資金源断絶
ビル・ブレア氏によれば、カナダでは1世紀にわたり大麻を非合法としてきたが、子どもと社会を守ることはできなかったが、合法化により大麻の生産、流通、消費のすべてのシーンで秩序をもたらすことができると語りました。非合法化により、ブラックマーケットを大麻が流通し、ブラックマーケットを支配する犯罪組織の資金源となっていたが、合法化することによって通常のマーケットで流通するようになり犯罪組織への資金の流れ込みを断絶したいということです。
■非合法で使用していた大麻の生産、流通、消費を規制下に置き税収につなげる
通常のまマーケットで流通することにより、嗜好品としての税金対象となり、税収をアップさせる目的があります。
こうした施策には、大麻をお酒やたばこのように年齢制限のある嗜好品として取り扱うというベースがあります。取り扱いによっては常習性や中毒性につながるため、麻薬として規制されて100年がたったが、規制によっては流通を止められなかったし、むしろ闇市場を流通することによって資金源を与え規制が難しくなったというところが指摘されています。
今回の合法化は、先進国として最初ということで「大麻栽培」という大きなマーケットが予測される産業を公にスタートできるという事でもあると言えます。
日本では多くの逮捕者が出ている状況がありますが、どのような経緯で大麻取締法はできたのでしょうか。
大麻取締法とは
■大麻取締法制定のおおまかな流れ
1925年(大正14年)「インド大麻」として、インド大麻製剤の医療・学術目的のみの使用制限、輸出入や不正取引の規制に関する規定が設けられることで、大麻の国際的規制がスタート
1930年(昭和5年)麻薬取締規制が制定され、大麻が麻薬指定された
1945年(昭和20年)ポツダム省令で大麻は麻薬と指定され大麻草の栽培等が全面的に禁止された
1948年(昭和23年)大麻の所持、栽培、譲渡に関して施行された日本の法律。麻薬取締規制から分離
■大麻取締法の目的
前提として、麻藥の取締いの如何は民族の興亡に影響するといつても過言ではないとし、
・麻薬の害毒を排除しつつ一方医療上学術上必要なものを確保して国民医療の完璧を期するため
であり、
・大麻草を裁培している者は大体が農業に従事しているもので、麻薬取締法案の取締りの対象たる医師、歯科医師、藥剤師等とは、職業の分野が異なる関係上、別個な法律を制定し、取締りの完璧を期するため
■大麻取締法の内容
・大麻の不正取引及び不正使用を防ぐため大麻を取扱う者は免許制とし、この免許を受けた者以外の者は、大麻を取扱うことを禁止する。
・大麻の取引を要式行為とし、又大麻取扱者に記帳義務及び報告義務を課して大麻の移動の責任を明らかにした。
■取り締まり対象
・大麻取締法における「大麻」とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品であり、樹脂はこれに含まれ、成熟した茎と種子及びその製品が除外されること」が規定されています。七味唐辛子には種が入っていますが規制されていないからです。
・大麻取扱者以外は、生産、流通、「研究のための使用」を禁じられています。
・「大麻」から製造された医薬品の使用、施用を禁じられています。
・特定の場合以外は、大麻に関する広告を行うことを禁じられています。
・「所持と使用」が合せて取締対象になります。大麻は日本国土で自生し、吸引してしまうこともあるため「使用」だけでは取り締まり対象にはなりません。
・1991年の改正で日本国外にて大麻をみだりに輸出入・栽培・譲渡し・譲受け・所持等の行為を行った者についても、日本の法律による処罰対象となりました。外国の取り締まりを受けなかったとしても、日本に帰った時点で取り締まり対象となります。
大麻で捕まった人々
・加藤三郎(左翼活動家)/1970年代に北海道で自生していた麻から作り出した大麻を所持し 逮捕
・ミッキー吉野(ゴダイゴ)/ 1970年に大麻取締法違反で逮捕
・柳ジョージ/1970年に大麻取締法違反で逮捕
・中村紘一(元J-WALK)/1977年、大麻取締法違反(所持)で逮捕。同年8月22日に懲役1年6ヶ月、執行猶予2年の判決が下る
・ジョー中山/1977年に大麻取締法違反で逮捕
・井上陽水/1977年大麻所持により逮捕され、懲役8ヶ月・執行猶予2年の判決
・研ナオコ/1977年に大麻の所持により逮捕され、起訴猶予処分
・上田正樹/1977年11月12日に大麻取締法違反で逮捕
・内田裕也/1977年に大麻取締法違反で逮捕
・美川憲一/1977年10月~複数回 大麻取締法で逮捕
・清水健太郎/1983年~複数回 大麻取締法違反で逮捕
・萩原健一/1983年に大麻の所持により逮捕
・勝新太郎/ 1990年1月にアメリカ合衆国ハワイのホノルル空港で、下着にマリファナとコカインを所持していたとされ 現行犯逮捕。1991年には日本で麻薬及び向精神薬取締法により逮捕され懲役2年6ヶ月・執行猶予4年の有罪判決
・長渕剛/1995年1月24日に大麻取締法違反で逮捕
・いしだ壱成/2001年8月20日に大麻取締法違反で逮捕
・大森隆志(元サザンオールスターズ)/2006年5月11日、覚醒剤取締法違反と大麻取締法違反で妻と共に逮捕。2006年7月19日、懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の判決が下る。
・中島らも(作家)/ 2003年2月に大麻取締法違反で逮捕
・加勢大周(元俳優)/2008年10月5日、自宅で覚せい剤と大麻を所持していたとして、覚せい剤取締法違反(所持)と大麻取締法違反(所持)で逮捕。同年12月18日、懲役2年6ヶ月、執行猶予3年のは判決が下る。
・若麒麟(元力士)/2009年1月30日に乾燥大麻16グラムを所持していたとして 大麻取締法違反で神奈川県警に現行犯逮捕。懲役10か月・執行猶予3年の判決
・成田昭次(元男闘呼組)/2009年3月9日に自宅に乾燥大麻を所持していたとして大麻取締法違反で逮捕され、 懲役6月・執行猶予3年の判決
・竹田恒明(明治天皇の玄孫)/2015年7月20日に六本木で大麻を所持していたとして大麻取締法違反容疑で現行犯逮捕
・高樹沙耶(元女優)/2016年10月25日に、沖縄県石垣島の自宅において 乾燥大麻を所持していたとされ、厚生労働省の麻薬取締部に大麻取締法違反の疑いで逮捕。女優引退後は、国内で禁止されている医療用大麻の解禁を訴える活動を行っており、 2016年7月の参議院選挙にも東京選挙区から立候補し、大麻取締法の改正などを訴えた
・田中聖(元KA-TUN)/2017年5月24日に東京都渋谷区の路上で大麻を所持していたとして、警視庁に大麻取締法違反の疑いで逮捕。
中には、複数回の逮捕や覚せい剤などを所持していた悪質なケースもあります。
大麻をつかうとどんな害があるの?
大麻を使ったらなぜいけないのか、というと、依存性があり、中毒性があるからです。品種改良が進んでその毒性が進んでいるとも言います。
世界保健機構がいう大麻の危険性は二種類あります。
■急性の害
・学習や記憶など認知機能の障害
・動作の調整とか注意力が低下するなど精神運動機能の障害がおきる
■慢性の害
・認知機能の永続的で深刻な障害、依存症、精神病の悪化
・呼吸器の疾患
・胎児への害
・発がん性などがある
・生殖機能の障害
・精神病的症状の発現など
大麻の医療的使用もNGな日本
大麻製剤は、末期がんの疼痛などを抑制する作用があります。また、多発性硬化症やクローン病、HIV感染症などへのさまざまな効果も報告されています。しかし、日本では医療目的であっても大麻の使用が許されていません。大麻製剤の1つ「サティベックス」は、大塚製薬がアメリカでの独占的販売権を有していますが、日本では使えないのですね。モルヒネでは効果が得られないタイプのがん性疼痛に効果を発揮すると言われる「サティベックス」は、口腔内にスプレーするだけで投与できるという簡単さもあるのですが・・・。
医療用大麻の解禁を訴える活動をして参議院選挙に立候補までした高樹沙耶さんが、自身の歯痛を鎮痛するために大麻を使い所持していたために逮捕される事件がありました。その「活動」自体を”遊びの延長”であるとして全面否定し、本当に大麻の医療的使用を必要とする人のところにますます届かなする害悪だと糾弾する人がいるように、どこまでが医療行為でどこからが”遊びの延長”になるのかを判断することは、法曹界にも難しいことに違いないでしょうね。
そのあたりの線引きがしっかりしていないのが現状です。
危険な大麻(たいま)と神道の「大麻」の違いは?
■麻薬のなかまの「大麻」
マリファナ/
大麻草の葉を乾燥させたもので、これをタバコのようにして吸煙するもの。テトラヒドロカンナビノール(THC)と呼ばれる物質が、脳にあるカンナビノイド受容体に結合し、幻覚作用や多幸感をもたらす
ハシシ(ハッシュ)/
大麻草のエキスを樹脂化したもの
■神道と「大麻(たいま、おおぬさ)」
神棚をお持ちの家では、神社からいただくお神札を神棚に設置します。神棚の中央に祀られるのは「神宮大麻」です。お祓いなどで使用する大麻(おおぬさ、大幣)に取り付けられているたくさんの紙垂(しで)は光を表していて、祈りをささげた時にあらわれる神様の依代とされています。
この大麻(おおぬさ)をコンパクトにしたものが「神宮大麻」など神札なのです。
麻は、他にもしめ縄に使われています。
しめ縄が古文書に登場するのは「天岩戸開き」の時です。スサノオの乱暴狼藉により岩戸にお隠れになった天照大御神が、ご神事により岩戸からお出ましになった後、もう岩戸へはお戻りにならないようにとしめ縄が岩戸に張られたのです。
天岩戸開きの物語に欠かせない逸話は、アメノウズメの神踊りはないでしょうか。我を忘れて神かかりとなり着物もはだけて踊りくるったと伝わりますが、これが全国の祭りの起源とされますし、芸能のはじめでありました。芸能も最初はご神事として始まったのです。「かかん のん てん」といいますが、神かかりとなってご神託をいただくことで国の政(まつりごと)を行って日本という国は今に続いているのですね。神かかりと大麻は深い関係があるようです。
というわけで太古の昔からから麻作りはとても重要な産業だったのです。伊勢神宮では5月14日に神御衣祭(かんみそさい)が行われますが、和妙(にぎたえ、絹布)は神服織機殿神社に、荒妙(あらたえ、麻布)は神麻続機殿神社に奉職されます。麻がとても大切に扱われてきたことがわかります。
そんなわけもあり全国で麻が栽培され各地に麻の字が入る地名や、家とそれを表す家紋にも麻紋があります。
むかし、大麻を司っていた豪族は忌部(いんべ)氏と言われています。アメリカで大麻製剤を開発・販売している大塚製薬は、鳴門市を発祥の地としており、忌部氏の流れをくむ企業だとも言われています。
麻のおおいなる効用を日本から抜き取る施策として戦後、大麻取締法が登場したという説もあるほどです。
神道の軸ともいえる「おおぬさ」のことを「たいま」と言って、マリファナなどと同じ日本読みをすることで、本来の意味がすり替えられているような面もるのかもしれません。
世界で合法化のその先
アメリカの州やカナダ政府が合法化した大麻の流通ですが、どのような結果が出るのかは今後の検証期間を経た後のことです。身まもりたいですね。
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