平尾昌晃さんが亡くなり、推定60億円と言われる資産を巡って、平尾さんの3人目の妻と3人の兄弟の間で相続問題が勃発しているとニュースされていましたね。また、昨今の日本の問題として挙げられる「空き家問題」も、親の家や土地の相続をめぐる一つの表れとも言えます。
ふいに人生の終わりがやってきた時、望まぬ葬儀や、財産の行く先を望まない方向で行われることを避けるために「終活」している人は増えています。亡くなった樹木希林さんの終活の様子は時折報道もされていましたね。美学を感じられるほどに、人生の終わり方をデザインするのは自分自身であると、私たちに教えてくれました。
2017年にお昼の情報番組フジテレビ『バイキング』で、坂上忍さんが終活を終えたことを話されていました。気になるその内容について中京テレビ『キャッチ』で特集されていました。
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収入一日80万円で貯めた5億円の終活資金
坂上忍さんは子役として芸能生活を開始していますが、近年ブレークしたイメージキャラは「毒舌」でした。歯に衣着せぬ物言いは『バイキング』の前番組『笑っていいとも』の一コーナーに出演した時の発言から始まり、それからバラエティへの露出が増えていったという事です。2014年4月から『バイキング』月曜日のMCとして起用され、2015年3月末から『バイキング』の総合MCに抜擢されてからは、ボロボロだった視聴率を次第に上げ、同時間帯の情報番組の中で、1位を狙える位置にまでに押し上げた立役者をえんじて現在に至っています。おそらく「毒舌」の陰には「こころくばりからの真(本音)の発言」という坂上さんのスタンスが流れているから、番組スタッフにも出演者にも信頼されるし、視聴者もついてきているのだと、その経緯から想像できます。
ということで、今や押しも押されもせぬ『バイキング』MCとして他にもたくさんのレギュラー番組を持ち、その稼ぎはというと『キャッチ』取材に寄れば1日80万円だそうです。月収およそ2,400万円、年収にして3億円弱。そうして貯めた5億円を終活資金に充てたとのことでした。ではその内訳はというと「生命保険」「愛犬の譲渡先」「母親の老後仕舞」「仕事の始末」「現金以外の資産の移譲先」の内容を取材したものでした。
終活のメインに位置するのは「相続対策」である、ということで、日本相続知財センターによる『相続対策』セミナーと照らし合わせながら、坂上忍さんの事例を見ていきたいと思います。
終活=相続対策優先順位第一位-争族・争続対策(遺言書・エンディングノート)
平尾昌晃さんのご遺族による揉め事に代表されるような「争族」は、珍しい事ではなく日本全国あちらこちらで勃発し問題になっています。専門家は「お金があるから争族になるのではなく、少ない財産だからこそ争族になるケースが多い」といいます。なぜかというと、ある程度多額の遺産がある場合はそれなりに対策していることが多いけれども、わずかな財産の行き先をあらかじめ決めておくという習慣がまだ日本には定着していないからでしょう。
具体的にどのようなトラブルが起きるのでしょうか。
争族ケース1
子どもがいない夫婦の夫が亡くなった。夫の兄ににも相続する権利があり、妻は夫の財産を全部相続できるわけじゃない。争族ケース2
「お墓・仏壇」を引き継いだ長男と、「両親の世話」をした長女、どっちの取り分がどれだけある?争族ケース3
離婚した先妻の子どもと後妻の争族
ということで、肉親との骨肉の争いは醜いし疲れます。それで病気に罹ってしまう人だっていますから(経験上)やっぱり親の代での事前対策は大事ですね。
争族の具体的対策
・公正証書遺言を作成する
・エンディングノートを書く
・生命保険で受取人を指定する
・生前贈与を計画的に行う
・家族信託を利用する
・資産(不動産など)の資金化
などを行うことで、発生しうる家族・兄弟間の争いの種を事前に消し込むことが可能です。
生命保険は、受取人が指定されることから、遺言書の代わりにもなり相続税対策にも活かせます。エンディングノートに各項目を上げておきますのでご参考になさってください。
エンディングノートに書いておくとよい項目
■自分の事
・自分自身の家系図
・自分と家族の生年月日
・知人、友人の連絡先
・自分自身の学歴、職歴、住居歴、こどもとのこと、配偶者とのことなど思い出
■財産の事
・財産(預貯金・土地建物・株式・その他の資産・借入金)
・遺言書の有無
・生命保険・損害保険など
・年金番号
■日常生活・健康の事
・契約しているもの(クレジットカード・携帯電話・インターネット・その他会員サービス)
・ペットについて(かかりつけの獣医・ペット保険・日常の世話など)
・持病(かかりつけ医など)
・介護の事(介護が必要になったら「誰に」「どこで」してもらいたいかを希望する、介護費用の準備の有無)
・告知(病名や余命を告知されるか、しないでほしいか)
・延命治療を望むか望まないか
・尊厳死の選択
■葬儀・お墓の事
・葬儀についての希望(するかしないか、宗教宗派、戒名について、会場や規模について、喪主になってほしい人、遺影の希望、葬儀費用の準備があるか)
・お墓(どこに埋葬するかなど)
・仏壇についての希望
■家族へのメッセージ
おそらく、坂上忍さんもこうしたエンディングノートに似たものを作成し、すべてを決めていったと思われます。
愛犬を子どものようにかわいがる様子をテレビで拝見できる坂上さんですが、愛犬に財産を相続させることはできないということなので、同居する37歳の恋人に愛犬への「遺産」を託したということでした。
坂上さんには70代になるお母様がいらっしゃるそうですが、母の介護を誰が見るか、という取り決めも決定しているとのこと。お母様の近くにお兄様が暮らして介護が必要な状態になったらその世話をお願いし、千葉に住んでいて近くで世話をできない坂上さんが金銭面でサポートするという取り決めをしているそうです。
スクール事業もされているので、事業承継の手続きなどもある事でしょうが、情報としては長年面倒を見てもらっているマネージャーさんへの退職金は準備済みということでした。現金以外の資産についても決めているという事でしたので、事業のほうも片付いているのでしょう。
世話になった人、終わっていない感謝などを次々とおろしていく様子を、まざまざとみることができます。おろしておろして、キレイさっぱり軽くなっていく感じが伝わってきますね。
終活=相続対策優先順位第二位-納税資金対策(土地売却・生命保険・生前贈与)
相続対策の優先順位第二位は「納税資金」の問題を解決しておくことです。相続して納税するのは遺族です。遺族に負担を残さないために、自分が生きているうちにできる対策はあるモノでしょうか。
納税資金対策リスト
・生命保険
・生前贈与
・不動産の権利調整
・資産の資金化
・借入金
などの対策が考えられるという事です。
遺産トラブルのナンバーワンとされる不動産の困った事例としては次のようなものが上げられます。
土地建物の争続ケース1
土地の建物の所有者が異なる場合、土地のみ、建物のみを売買することができない土地建物の争続ケース2
違法建築不動産があると、再建築不能となり売却しにくい土地建物の争続ケース3
入居率が低いマンション・築古のアパートなどは銀行の融資が受けにくく売却は困難となる土地建物の争続ケース4
物件所得額を証明できない場合、売買契約書がない場合は売却時に余計な税金を課せられる場合もある
なかでも「空き家」がこまった争族問題に発展するケースが多く、事前対策がとっても大切です。
■もめない空き家予備軍対策
・現状をしっかり把握する(登記情報、境界杭、埋設物、解体費用、家財整理費用など)
・郊外で使用目的なないなら売却
・土地建物を共同名義にはしない
・あとあと処分に困らないためには早めに売却しシニア向けマンションなどに移住する
・認知症になると売約することができないので「任意後見契約」を済ませておく
・「墓・仏壇管理者」と「親の世話」が同じでないこともおおい。法律に従うならば不公平も生まれて争族に。ご先祖さまからの預かりもの、という考えにこだわりすぎない
相続問題で兄弟げんかをした挙句、土地をもらい受けた遠方の兄弟が、土地を有効活用できるはずはなく結局病気で寝込んでしまい、その介護費用をねん出するためにもらい受けた土地は二束三文で売られたそうです。寝込んで3年目。いまだ回復の見込みが立たない状況だと聞きます。残念な話ではあります。
■相続した空き家の売却で税金を安くする方法
・耐震基準に適合するリフォームを施して、相続した土地・建物を売却した場合
・相続後建物を解体し、土地を売却した場合
・売却額が1億円以下である場合
上記などの条件が適合する場合は売約益より3,000万円の特別控除が受けられます。(平成31年12月31日までに売却)
■生命保険で税金を安くする方法
さて、坂上さんが終活で行ったことの中に「生命保険の見直し」がありました。どんなふうに見直せばいいのでしょうか。
生命保険は「お金の遺言」ともいわれています。預金や不動産、株式は遺産分割協議をおこなってすべての相続人が捺印後相続が発生するものですが、生命保険には次のようなメリットがあります。
生命保険のメリット
1.早く受け取れる
相続放棄したとしても受け取れます。
2.遺産分割協議は不要
遺産分割でもめていたとしても受け取れる、死亡保険受取人固有の財産です。
3.非課税枠500万円
相続税法上、保険金はみなし相続財産として課税されますが、原則として一人当たり500万円の非課税枠が適用されます。
以上のようなメリットがありますが、遺産総額に占める保険金の割合が大きい場合「特別受益」と認定される場合がありますのでバランス的に注意が必要です。
このようにメリットの大きい生命保険ですが、トラブルもあります。
・そもそも家族が保険に入っていることを知らない
・保険証券の保管場所を知らない
・保険料の支払い方法を知らない
・どんな保険に入っているのか知らない
・受取人など契約形態・特約などを知らない
・指定代理人を決めていないので、認知症になった本人が保険金を受け取れない
こうしたトラブルもエンディングノートに書いておくと解決できますね。
■生前贈与で税金を安くする方法
生前贈与は110万円までは非課税となります。110万円を毎年子どもに贈ることで相続税や贈与税を減らすことができます。この生前贈与と生命保険を使った相続対策として、贈られる子どもが毎年110万円分を終身保険契約者となって、満期保険金受取人となり、死亡保険金受取を孫などに設定する方法です。控除額は3000万円越えで400万円にも上ります。
節税をしながら、末代までの禍根を残さないための準備は必要ですね。
それに相続すれば納税義務が発生しますが、土地の売却や受け取った生命保険金などで、納税義務を果たしていけます。
終活=相続対策優先順位第三位-相続税対策(養子縁組・借金・法人設立)
これまでに述べたほか、相続税対策として有効になる項目を上げていきます。
・養子縁組をする(配偶者と親の養子縁組、孫との養子縁組など)
・借入金(賃貸物件などを融資で購入し相続税評価額を減らす)
・法人設立
筆者の身近なケースですと、司法書士と相談して自分の配偶者を義父である自分の父との養子縁組をしたということがありました。49日に遺産の状況を6人の兄弟全員の前で話し、その結果の配分を現金で行って遺産相続問題をキレイにやり遂げたと聞きます。長男の「鶴の一声」効果もあったのでしょうが、一言の異論も出なかったのは見事だと思いました。
ここで上げた対策については、専門家と重々相談してかかる必要があるかと思います。
終活、節税して家族仲良くしあわせに生きるために必要ですよね~。
「お金をためることに興味はない。キレイに生きていくことに気を付けている、気配りの人」と坂上忍さんを知る人はそのように評しています。
樹木希林さんにも言えることですが、就活するということは、美しく生きることにつながるんだな~生きるための自分哲学がそこにあるんだ、と思いました。
それにしても、終活資金5億。
人生の途上にあり「やり遂げた」「まあまあやった」そう思った時に、人は終活を考えるのかもしれませんね。
「上々の人生でした」(樹木希林さん)
そう言える準備、できていますか?
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