社会生活

NPO起業の裏表ーボランティアを愛する人々の生々しい現実、元理事長インタビュー


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NPO法人(特定非営利活動法人)という名前から「非営利団体」「お金をとらずに活動するボランティア団体」というイメージがあります。例えば、災害時に出動する「レスキューストックヤード」という名古屋のNPO法人があります。彼らの活動内容は「災害支援」「復興支援」「ボランティア育成」などであり「災害対策ボランティア」のイメージが強くあります。その法人の目的は営利事業ではなく、災害などで困った人々を継続的に支援することが目的となっており非営利事業となっています。

では彼らの活動費はどこからねん出しているのでしょうか。常勤スタッフには生活費が必要になりますし、全国を移動する移動費や、支援物資を集めなければなりません。その活動費を稼がなければNPO法人は継続できません。NPO法人にかかわってサービスを行う人にとっても、サービスを受ける側にとってもよくわからない面が沢山あるNPO法人について、あるNPO法人の起業にかかわった元理事長の女性A美さんにお話を伺ってみました。



NPO法人の財務ーどこから活動費を集めているか

一例としてNPO法人レスキューストックヤードについて平成23年度の収支計算書を見ると、1億3千万円以上の収入をえており、支出は9千万強となっています。収入の中で寄付金や助成金は約6千万円で、会費収入は約260万円、残りの7千万円以上は自主事業収入となっていて黒字の収支報告です。

もう一つ、父子家庭支援のNPO法人ファザリングジャパンの平成29年度活動計算書を見ると、4千万円以上の収入をえており、支出は3千5百万円弱となっています。収入の中で助成金・寄付金は590万円強、会費収入は410万円強、3000万円以上はスクールや調査などの自主事業で収入をえています。

いずれも会費および寄付金や助成金だけでは運営できず、自主事業で稼ぐ流れがしっかりとできていますね。

例に挙げたNPO法人は比較的うまく運営しているほうですが、多くのNPO法人設立支援を業務としている行政書士に寄れば、NPO法人の活動実態は次のようなものだと言います。引用元:NPO法人の作り方

  1. NPO法人という制度の特色を十分活かして活動されているところ・・・全体の5%ぐらい
  2. 設立前に思い描いていた理想とは若干異なるが、なんとかNPO法人を運営できているところ・・・・全体の25%ぐらい
  3. 設立前に思い描いていた理想とは大きく異なるが法人があるので仕方なく運営しているところ・・・全体の20%ぐらい
  4. 設立前の理想と現実のギャップが大きすぎて、活動そのものを辞めてしまっているところ・・・全体の50%ぐらい

上記参考にしたNPO法人聞いたことがある人も多い成功している法人であり、上位5%の1.にカテゴライズされるNPO法人だろうと思います。

しかし、全体の7割ものNPO法人がうまく活動できないでいるというのには驚いてしまいますね。
会員による会費は運営の足しにすぎず、自主事業がしっかり機能しなければ、NPO法人運営は不可能であるということが言えるのでしょう。
モチロン補助金や助成金が出る場合もあるようですが、そういったものはあくまでも足りない部分を補う程度のボリュームにすぎません。

「自主事業無くしてNPO法人は成り立たない」
株式会社など営利事業の法人には当然あるべき事業が見えていないのはとても危険、というのはNPO起業を果たし、理事長となったA美さんの弁です。

なぜ、そのような無謀な起業となるのかについて、A美さんは「社会起業支援塾」の功罪について語ります。



社会起業支援塾や補助金の役割と功罪

内閣府の地域社会雇用創造事業をはじめとして、政府の政策による社会起業支援事業が全国の事業者により起業家の卵を募集され、無料で起業まで導くというセミナーに参加すると、起業プランをプレゼンした結果、何名かが補助金を獲得できるという起業塾に募集されることがあります。

政府の政策事業ですから事業年度ごと入れ代わり立ち代わりそうした支援事業が立ち上がります。補助金に関しては起業するために必要な初期費用を補助するというものですが、基本的には補助金と同額の自己資金を用意できることが条件になっていることが多いと言います。補助金分を借入する場合は銀行や公庫の融資審査機能を使って、起業できる人なのかどうかを審査するのですね。

地域社会雇用創造事業としての社会起業塾はその名の通り「地域で雇用を生む」ことで失業率をおさえたり、地域を活性化するということ、埋もれている女性や若者の起業家を育てて産業を振興することなどが期待されたのです。

社会起業塾に参加したA美さんによれば、同期生で実際に起業し成功した例はほんの一部だそうです。社会起業のスタイルは株式会社でも一般社団法人でも、個人事業で始めてもよく、補助金が交付される場合でも個人の事業スタイルに合わせた形態をとることができます。

起業塾時代の同期生は、もともとやっている個人商店を株式化して申請する人がいたり、社団法人を立ち上げる人がいたりして様々だったといいます。
A美さんがNPO法人で起業しようと決めた理由は、それまでも「協議会」という名で人が集まることによって運営できるスタイルになじみがあったからというのが一つ。理想は高く、もっとも社会起業らしいスタイルがNPO法人だったから、といいます。

しかし、振り返ってこうも言っています。
「幸せな暮らしのための協議会」としていろいろな分野のプロが集まり講座やスクールを開催するという事業を軌道に乗せる以前のNPO起業は、あまりにも無知であり無謀な選択だった、と。

A美さんの起業プレゼンは通り、補助金は満額が交付されることに決まりました。事業者にも事業者の都合があり、交付しなければならない「補助金額」が決まっています。事業者のプログラムを履修した後は、何らかの事業形態で実際に起業して半年後に交付の日を迎えるのですが、交付される補助金は領収書があって、起業経費と認められる合計額を請求できることになっていたそうです。補助金は実際に使った経費の範囲で支払われるので、事業収入がなければ、手持ち資金を活動費に充てるしかないのですね。

A美さんは「なんとく補助金を満額もらわなければ損な気がして、使わなくてもいい駐車場代や備品など買って使う癖がついてしまった」と語ります。「一度に何百万ももらえるのはありがたいけれども、しっかりとした使途がないまま主婦感覚で細かい経費でうめようとして、補助金を有効に使えなかった」と振り返っています。

聞けば起業塾は2カ月ほどで終了したあと起業コンペに至ります。A美さんのようにしっかりとした起業準備ができないままに補助金をうまく使えないでいる人も多いのかもしれません。

ズバリ、社会起業塾はA美さんにとって何だったのかを聞いてみました。

「主婦として子どもを育てる間にもいつも自分が社会に対してできることは何かと探していました。理想の暮らしを家族に対して、社会に対して提供できたらいいなと。子育てが終わりに近づいた時、社会起業塾に出あい、自分自身が暖めてた理想の幸せな暮らしというものをどのような事業として落とし込めるのかを模索したことで、社会起業の事業ビジョンが見えてきました。「理想実現」が一番高い目標となる社会起業には、心を揺さぶられました。プレゼンでは思い描くことを思いっきりみんなの前で発表し、それが当選した時の”こんな私でも認められた”感が、半端なかったのを覚えています。本当に「理想」に引っ張られて情熱を掻き立てられ、足元をしっかり見据える時間とかはなかったです。例えば、NPO法人にするという選択がただしかったのか、とは今でも思います。小さく個人事業で始めればよかったのかも、と。」

社会起業塾に通う人は年齢も男女も立場も様々でしょうから、一概に社会起業塾の功罪については言えない部分があるとは思いますが、A美さんのケースでいえば、「起業スタイルの適正診断」みたいな時間があると失敗も少ないのではと思いました。社会起業に興味を持つ人はもともと「熱量」が高いでしょう。その熱量で「理想」を実現化するのが社会起業だとしたら、地に足がつかずどんどん上って行ってしまうという面があるはずです。現実運営面のサポート体制がその人にあるかどうかを見極めなければせっかくの補助金が無駄に終わります。

NPO法人に群がる人々

「NPO法人の運営は難しいよ。」とA美さんにアドバイスしたのは、監事として依頼した公認会計士でした。難しいよ、と言いながらも監事を引き受けてくれたそうです。NPO法人には理事が3名と監事1名が必要なんですね。

A美さんが、自主事業を軌道に乗せ、起業ミッションを達成するために最初に必要としたのは「集客できる人物」だったそうです。NPO法人の理念や活動に賛同し会員を集めるためにも、講演やセミナーを開催するにも集客が必要でした。A美さんが得意な部分は理念やビジョンを出す事であったのですが、集客するあてがなかったそうです。いろいろな会に顔を出していて、実際に集客できる人物にA美さんの理想を話すと快く理事を引き受けてくれたそうです。もう一人の理事は、A美さんの理想を語った時に意気投合した人物でした。同じ理想に向かいともに歩めると思ったそうです。

会員はその後少しづつ増え、NPO法人として活動を始めるころには多くの人にNPOの存在を知ってもらえるようになってきたそうですが、困ったことが起き始めました。NPOの集まりの中で、無関係の商品勧誘などが横行するようになったというのです。NPOそのものの活動というよりは「集まることでメリットを感じている人」が集まりやすかった、とA美さんは言います。

月に一度集まる時にはA美さんはまずNPOの活動指針や今後の事業についてなどを話したと言いますが、理事の一人は「補助金があるから」「社会のためにいいことをしようとしている」などという文言を話して人を連れてきていたということが次第に、集まる人を変えていったと語ります。

・補助金のおこぼれにあずかろうという人々
・カラダに彫り物のある人・脛に傷ある人※ファッションとして入れ墨をする人はもちろんいますが、一般的な意味で
・NPOを渡り歩いている無料好きの人

「理念」のもとに人を集め運営していく難しさを、あらためて思い知ったA美さんです。集まる人々の価値観も方向性も様々です。それぞれの思いを実現していくにはどうしたらいいのか。毎月発生する固定費を稼ぐには、曲げなければいけない部分もあるのだろうか。次第にA美さんが実現したいものとはかけ離れていくのをどう修正しらいいのかと思い悩む日々。これまでにかかわった何人のも大切にしたい人との決裂・・・。

補助金目当てでやれもしない仕事を契約し中途半端に行い、契約した金額だけは払ったということもあったそうです。事業家としては甘いA美さんに付け込む詐欺まがいの行為に大きな打撃を受け、A美さんは理事長であることを辞したそうです。打撃を返済するためにはNPOの事業だけでは立ち行かなくなり、NPO法人は休眠に入っていきました。

「設立前の理想と現実のギャップが大きすぎて、活動そのものを辞めてしまっているところ・・・全体の50%ぐらい」そのものの一つのサンプルがA美さんです。休眠とはいえ、毎年事業報告書の提出義務はあり、法人税もかかってきます。

「理想を実現することは今も諦めていない」
「これまでかかわってくれた人への恩返しができていない」
「補助金も含めてかけてきた経費ぶんだけ稼げていない」
そんなことを考えると、NPOを止めてしまうことを迷ってしまうと話すA美さんです。



NPOで起業しなければならないのはどんな場合?

A美さんの事業内容は現在も存在する法人ですので伏せますが、はたしてNPO法人にするべきだったのかはA美さん自身疑問だということでした。

ではどんな事業ならばNPO法人にする必要があるのでしょう。前述の行政書士さんのお話から引用します。

1.NPO法人を設立する必要はありますか?
2.NPO法人制度のメリットを享受できますか?
3.設立後の負担を考えたことありますか?
4.活動資金を獲得し続ける自信はありますか?

以上の答えが見つかれば、NPO法人にする意味があると言っています。具体的には、

・個人で始めたボランティアに人が集まってきて、運営者と参加者が完全に分離してきたという場合はNPO法人にする意味がある

そう考えるとボランティアをしたいというよりは「理想実現」がさきにあったA美さんの場合はあてはまりません。

・5年間だけ活動したい、という場合はNPO法人は向かない

・以下のNPO法人のメリットを見込めるかどうかの判断があります。
1.社会的信用の増加
2.団体名による契約や登記が可能
3.組織を永続的に維持できる
4.経費の認められる範囲が広い
5.職員採用に有利
6.責任の所在が任意団体と比べ明白である
7.官公署から事業委託・補助金が受けやすい
8.金融機関からの融資も可能
9.会社法人とは比べ物にならないほどの節税が可能
10.以外と簡単に多額の資金を集めることができる
11.会社法人より広報にお金がかからない

理想だけはもっている普通の主婦であり、社会的地位を何も持たないA美さんにとっては、このメリットは少なくなかったことでしょう。

・毎年事業報告書を提出、法人税、正会員への活動報告義務がNPO法人にはあります。

・日銭をかせぐ商いがあるかどうか。それがないボランティア活動ならば、法人にすべきではありません

最低でも固定費を支払う「あきない」が必要です。テキスト作りや調査などで「あきない」になるまでの時間差がある場合は特に、注意が必要です。

 

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