2015年ぐらいから、日本でも毒親ブームがやってきてたくさんの毒親本が出版されています。心が痛むような酷い親っぷり。毒親に閉じ込められた行き場のないちいさな声がそれらから漏れてきます。
一方、毒親自身が毒親目線から書かれた本はほとんど見当たりませんが、自称毒親であるというハヤコ氏が、毒親を卒業する方法を述べた一書をご紹介します。
目次 Contents
毒親自ら語る毒親対処法
この本の最大の特徴は、毒親自身の目線で、毒親の対処法を示している点です。
多くの毒親本は、大人になった毒親育ちからみた毒親について、文章や漫画にして表現することで古傷を癒し、親の罪を告発することで恨みつらみを晴らしているような面がみられます。
「こんなひどいことをされた」と話すことで、自分のこころを解放する毒親育ちの自叙伝がほとんどですが、本書は毒親目線で書かれています。
実際、ハヤコ氏が具体的にどのようなタイプの毒親であったかを知ることで、本書の理解が深まりそうです。
子どもが嫌いな毒親
ハヤコ氏は小さいころから子ども好きではなかったと言います。
「幼稚だから子どもは嫌い」と思っていたようです。
それなのに子どもを産んだのは親への恩返しだと考えていて、親や伝統からのプレッシャーによるところが大きかったようです。親は「女は結婚するのが一番幸せ」「女は子どもを生むのが当たり前」という、その時代に生きる誰もが思うことを普通に生きようとする常識的な人だったのです。
出産する前から仕事に打ち込んでいたこともあり、できるだけ早く子どもを育て上げて仕事復帰することだけを考えていました。その結果、さまざまな教育メソッドを取り入れては胎児のころから試しています。
完璧で最短距離の子育てを目論んだのです。
そのような「完璧子育てを目指す親」のことを毒親とハヤコ氏は考えているのですね。
「完璧に育児をしようとする親が毒親だなんてことはないでしょう」と思いますが、その理由の第一が親自身の仕事に集中するため、という利己的(※どんな崇高な仕事でも子ども自身には関係ないという意味で)なものである点で子どもにとっては災難以外のものではないかもしれません。
教育ママという毒親タイプのハヤコ氏です。
このようなタイプの毒親の厄介なところは、教育本をたくさん読んでいるため、自分の行動に対して理論武装しているところでしょうね。家族のだれよりも教育理論を熟知しているため、偏った暴走をなかなか止められないのです。
ハヤコ氏自身目が覚めたのは、子どもが低学年の頃に学校に行きたがらないようになった時だそうです。
その時に相当苦しんだ結果「子育てに完璧を求めてはいけない」と悟ったのです。
「わたしはクズ人間」だと思っているすべての人に効く
表面的には毒親に見えないハヤコ氏は、『千と千尋の神隠し』に登場する主人公千尋の両親に、自分と同じ匂いをかぎ取ったようです。
表面的には毒親に見えない毒親が溢れかえっているのが現在の世で、毒親被害は有象無象(うぞうむぞう)に拡大していることへ危機感を覚えます。
ハヤコ氏は毒親ブームを助長しているのは毒親育ちの「被害者意識」にあるとみています。
毒親被害者でいる以上、毒親に一生振り回されるか、毒親から逃げるか、毒親を捨てるかに行き着きます。でもそれでは意味がないのだといいます。
逃げるのではなく「毒親からの卒業」を目標にすることを本書ですすめています。
毒親自身が毒親であることを卒業する。
毒親育ちが毒親から卒業する。
毒親育ちだと自分で烙印を押しているすべての人へ、
毒親育ちだから、こんなにダメな人間だ。
毒親育ちだから、いつも自信がない。
毒親育ちだから、クズがやることをしてしまう。
そろそろ毒親育ちを終わりにしたい。
毒親育ちを卒業しよう。
そのように意志した人のために役立つ本となっております。
秀逸な『千と千尋の神隠し』解釈
毒親を卒業するやり方を『千と千尋の神隠し』をお手本にして本書で解説しています。その根底には、毒親被害者をやめて〇〇〇になってほしいという筆者の願いが込められています。
この本の面白いところは、多くの人が知る大ヒットアニメ映画の解釈にあります。
『千と千尋の神隠し』は大人も楽しめる奥が深い映画ですが、本書の解釈は視点の斬新さと的確な説明により、初上映から10年後の世界にいる私たちの暮らしにも十分なリアリティをもって理解でき、腑に落ちてくるとの評価もあります。
映画の普遍性を読み解く解釈だけでも読みごたえがあります。
特にゆばーばとぜにーば姉妹についての考察は、私たちの中にある二面性を思い出させ、隠れたもう一つの可能性を開くカギとなるものであり、未来に活かせる知恵だと思います。
ゆばーばを毒親に見立てる手法も面白く、深刻になりがちな毒親本を読みやすくしています。
自分の未来は自分で開く覚悟を
毒親から逃避するのではなく、毒親を卒業するという本書の表のテーマがありますが、その本質は「運命を自ら切り開く」視点と「自分の未来を創造すること」への意識転換を迫るものだと感じます。
「毒親育ち」と表明することで被害者の立場にたつことをやめる覚悟を促しているのです。
その意味で本書は、過去にばかり執着せず、未来の自分へ意識を飛ばしつつ、目の前の今の生活をかえるキッカケを提供してくれる毒親本となっています。
善良な顔をしていてもほとんどの人が「罪持ち」の世の中
毒親ハヤコ氏がいう毒親とは「罪持ち」の親の事です。
長い人類の歴史の中で「罪」だとされ続けてきた内容が本分の中にありますが、それに照らすと、今の多くの親が「罪持ち」カテゴリーに分類されてしまうことでしょう。
私も罪もちです。
きっとだれでも重かれ軽かれ何らかの罪を償いながら生きているのだと思います。
今の世の中自体が、純真な子どもにとっての毒ある環境になっていて、子育てするのに難しい大変な時代に生きているんだなと気づかされます。
引用 ~罪持ちだからこそ、夜の世界に引き込まれ罪滅ぼしをするハメとなったのです。
そのような意味では、子どもは親の罪滅ぼしの道連れにされた被害者です。~
酷い罪もちの親の元に生まれた毒親育ちの子どもたちは、成長する過程で親のサポートを受けるどころか、邪魔すらされます。自分自身で人生を切り開かなければならない状況にあります。
引用 ~いつまでも「親のせいでこうなった」と被害者面してブーブー不満を鳴らす毒親育ち~
被害者の意識のままでは、自分の人生を切り開くことはできません。
誰かが何かをしてくれなければ、どうにもならないと思い込んでいるからです。
被害者は被害者らしく弱いものとしてふるまわないといけない、という刷り込みがあるからです。
その思い込みをぶち破るキッカケに本書がなるかもしれません。
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